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配送ドライバー不足の切り札。”件建て化”が救うEC物流の未来──あなたの荷物はどう届く?

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あなたが昨日ポチった荷物は、誰がどうやって届けているのか、考えたことはありますか?

年間50億3,147万個(国土交通省、2024年度)

これが日本で動く宅配便の総数です。

そしてその荷物を届けるドライバーが、今まさに構造的な限界に近づいています。2024年の時間外労働規制、2026年の物流効率化法、そして2028年に迫る約27.9万人の人手不足。EC需要は拡大しているのに、届ける人が足りない。この矛盾を解く鍵の一つが、「件建て化(個建て化)」という契約形態の転換です。

まず「車建て」と「件建て」の違いを知る

物流の現場には、大きく分けて二つの契約形態があります。

車建て(しゃだて)とは、「トラック1台いくら」という単位で運賃を決める方式です。荷物が半分しか積まれていても、トラックが走る以上は1台分の料金がかかります。運送会社にとっては収入が安定するメリットがありますが、荷主にとっては積載率が低いほどコストが割高になる構造です。逆に荷量が急増した繁忙期には追加車両の手配が難しく、ドライバーへの過重負荷が生じやすくなります。

件建て(こだて/個建て)とは、「荷物1個いくら」という単位で運賃を決める方式です。荷物の量が変動しても、コストがそれに連動して変動するため、荷主側は固定費を変動費化できます。ドライバー側にとっては、多く配達すればするほど収入が増える歩合型の側面を持ち、繁忙期に積極的に稼ぐことができます。

長らく日本の物流は車建て中心で動いてきました。その構造が今、EC需要の爆発と人手不足の深刻化によって、限界を迎えています。

なぜ「車建て」では限界なのか

2024年4月に施行されたトラックドライバーの時間外労働上限規制(年960時間)は、一人あたりの稼働量に天井を設けました。この規制によって物流キャパシティは約14%不足するとの試算があり、さらに対策が講じられなければ2030年度には約34%の輸送力不足に陥ると国が明示しています(zeroboard.jp・物流効率化法解説、2026年1月)。

車建て契約では、需要が少ない閑散期でも固定費がかかり続けるため、中小運送業者ほど経営を圧迫されます。実際、物流業界の倒産件数は近年上昇しており、担い手の減少に拍車がかかっています。

一方で宅配便の総取扱個数は右肩上がりで、2024年度は前年度比+0.5%の50億3,147万個(国交省、2025年8月)。2025年1月単月でも大手3社合計で3億6,396万個(前年同月比+4.4%増)と成長が続いています。届ける荷物は増えるのに、届ける人と仕組みが追いつかない——この構造矛盾を解消するために「件建て化」が注目されているのです。

件建て化が変える三つの現場

ギグワーカーとの相性抜群

Amazon Flexに代表されるギグワーカー型の配送モデルは、まさに件建て構造の代表例です。ドライバーが自分のライフスタイルに合わせて稼働時間を選び、配達した件数分だけ報酬を受け取る。Amazonは2025年末時点で47都道府県にAmazon Flexを展開し、軽乗用車での参入も可能にすることで担い手の裾野を広げています(Amazon PR TIMES、2025年12月)。件建てだからこそ、副業ドライバーや主婦・シニア層など多様な人材が物流の担い手になれる土台が生まれます。

ネットスーパー×来店宅配の混載への応用

前回の記事でも紹介したルーフィの「DeLink」システムは、単店舗ごとに車建てで物流費を負担していたネットスーパーの構造を、エリア全体で件数をシェアする件建て的な変動費モデルに転換するものです。受注件数が少ない日でも、近隣店舗の来店宅配と合わせてエリア全体の配送件数を集約し、コストを分散する。固定費が変動費になることで、小規模スーパーでもネットスーパーが採算の取れるサービスとして成立します(PR TIMES、2026年1月)。

自動車メーカーの共同輸送でも件建て発想

2026年2月18日にはBloombergが、日本自動車工業会(自工会)がドライバー不足を受けて加盟メーカーによる共同輸送の協議を始めたと報じました。これも車単位の専属輸送から、荷物単位・区間単位でコストを分け合う件建て発想への転換といえます。業種を問わず「荷物1個あたりのコスト」で考える視点が、物流の新しい標準になりつつあります。

2026年4月、荷主も無関係ではいられない

2026年4月に施行される改正物流効率化法は、件建て化の普及をさらに後押しする制度的な追い風です。年間貨物取扱量が9万トン以上の特定荷主には、物流統括管理者(CLO)の選任が義務化されます。CLO未選任の場合、最大100万円の罰金が課されます(realpacking.com、2026年2月)。

これまで物流は「現場任せ」にされてきた企業も多く、荷待ち時間の長さや非効率な積み合わせが常態化していました。CLO義務化によって、経営層が物流コストを「固定費として抱えるリスク」として正面から向き合うことになります。件建て化・混載・共同配送への転換は、もはや現場の工夫ではなく、経営判断の問題になりました。

ドライバーにとっての件建ては「諸刃の剣」

件建て化は荷主にとって都合のいい話だけではありません。ドライバー視点では、件数が増えれば稼げる一方、閑散期や荷量が少ないエリアでは収入が不安定になるリスクがあります。車建て契約では「走るだけで一定収入」だったのが、件建てでは配達件数ゼロなら収入もゼロです。

2026年の軽貨物業界では、「ただ荷物を運ぶだけのドライバーの淘汰が始まる」という見方もあります(note・hakobito、2025年12月)。AI最適ルート、複数社の混載対応、丁寧な置き配技術——そうした付加価値を持つドライバーが高単価の仕事を集め、そうでないドライバーとの格差が広がっていく可能性があります。

件建て化は物流インフラを救う可能性を持つ一方で、担い手の質と収入格差という新たな課題も生み出します。制度設計と報酬の標準化が、今後の重要な論点となるでしょう。

あなたの荷物が届くまでの「見えないコスト」

ECサイトで「送料無料」「翌日配達」をクリックするとき、その裏側にはドライバー一人ひとりの労働と、いま崩れかけている物流インフラがあります。

件建て化、混載、AI最適化、共同配送、白ナンバー弾力化、

これらすべては「有限なドライバーと車両を、どれだけ賢くシェアできるか」という一つの問いへの回答です。消費者として再配達を減らし、置き配を活用し、配送日時を指定する。その小さな行動が、日本の物流を支える最後の砦になるかもしれません。

参考・引用元

#媒体・機関記事・資料名掲載日
1国土交通省令和6年度 宅配便・メール便取扱実績(50億3,147万個)2025年8月27日
2LNEWS2024年度宅配便取扱個数・前年比+0.5%2025年8月27日
3国土交通省月例経済(令和7年4月号)2025年1月 大手3社宅配便3億6,396万個(+4.4%)2025年4月
4zeroboard.jp「物流効率化法とは?輸送力不足14%・34%試算の根拠」2026年1月19日
5realpacking.com「物流2026年問題、CLO未選任なら100万円罰金」2026年2月12日
6日本経済新聞「物流2026年問題が問う荷主責任 4月からCLO選任義務化」2026年1月2日
7PR TIMES(ルーフィ)「ネットスーパーと来店宅配の混載配送システム『DeLink』リリース」2026年1月28日
8Amazon PR TIMES「Amazon、2025年の物流・配送拠点やサービスの拡大について」2025年12月23日
9Bloomberg「物流ドライバー不足解消へ、自動車メーカーが共同輸送で協力」2026年2月18日
10note(hakobito)「2026年予測:軽貨物・Amazon配送はこう変わる」2025年12月28日
11アシストライン株式会社「配送料金:個建てと車建ての違い」参照
12transcosmos-ecx.jp「物流2024年問題は継続中!物流2026年問題とは」2026年2月1日
13imai-project.co.jp「”当たり前に届く”時代は終わり──物流2026年問題とは?」2026年2月14日
車建て契約の空きスペースが多いトラックと、件建て契約で荷物が満載のトラックを対比したイラスト。ドライバーがAIルートと収入を確認している。