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そもそも白ナンバーとは何か
道路を走るトラックには大きく2種類がある。緑ナンバー(事業用) と白ナンバー(自家用) だ。
緑ナンバーは他者の荷物を運んで運賃を受け取ることができる「許可を得た運送事業者」の証。一方、白ナンバーは原則として「自社の荷物を自社の車で運ぶ」用途のみに限られており、他者から報酬をもらって荷物を運ぶ行為は道路運送法違反となる。緑ナンバーを取得するには運行管理者・整備管理者の選任、定期点検、ドライバーの健康管理など厳しい安全基準を満たす必要があり、コストも時間もかかる。
この「白ナンバーでは有償運送できない」という大原則が、今まさに大きく揺らごうとしている。
国交省が動いた──弾力化の中身
国土交通省は2026年4月から、ラストマイル輸送の輸送力確保策として例外的に認めてきた白ナンバートラックによる有償運送の取り扱いを大幅に弾力化する方針を固めた。3月13日までパブリックコメントを募集中で、その後4月に施行される予定だ(カーゴニュース、2026年2月)。
改正の具体的な内容は3点に整理できる。第一に、有償運送に使用できる自家用車の許可台数の上限を撤廃する。これまで「何台まで」という制限があったものを、事実上無制限化するものだ。第二に、同時稼働台数の制限を年間稼働日数(最大90日)の範囲内で撤廃する。第三に、運行管理システムによる時間管理を条件に、日単位だけでなく時間単位での有償運送を可能とする。つまり「午前中だけ白ナンバーで配送OKにする」という細かい運用が可能になる。
ただし前提条件がある。あくまで緑ナンバーを持つトラック事業者が運行・労務管理などの安全指導を行うことが必須条件であり、完全な規制撤廃ではなく「管理された例外の拡大」という位置づけだ。
なぜ今なのか──物流2024年問題の深刻な現実
この弾力化の背景には、物流業界が直面する構造的な危機がある。
2024年4月から施行されたトラックドライバーの時間外労働規制(年間960時間上限)により、既存の輸送能力が大幅に低下した。2028年には国内で約27.9万人のドライバー不足が予測されており、宅配便の再配達率はいまだ約10.4%という高止まりが続いている(hacobu調べ、2024年)。さらに2026年4月には「改正物流効率化法」が本格施行され、一定規模以上の荷主企業に物流効率化の義務が課される「物流2026年問題」も重なる。
ECの爆発的な拡大により配送の小口・多頻度化が進み、特定の時間帯
──特に午前中や夕方──
に配送需要が集中するようになった。この需要の波に緑ナンバーだけでは対応しきれなくなっているのが現実だ。今回の弾力化は昨年11月に「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会」がとりまとめた方向性を踏まえたもので、まさに現場の悲鳴に国が応えた形と言える。
Amazon置き配への影響──8割がすでに置き配の時代
2026年現在、Amazonの配送の約8割が「置き配」 となっている(note・配送現場レポート、2026年1月)。かつて配送員を苦しめていた再配達の山が激減し、一件一件をスムーズに完了できるようになった。これはAmazonが2020年3月に置き配を標準設定化したことが起点となった大きな変化だ。
今回の白ナンバー弾力化が本格運用されれば、Amazonをはじめとする大手EC事業者の配送能力はさらに拡大する可能性がある。具体的には「ピーク時間帯だけ白ナンバーの一般ドライバーを活用する」「特定地域のラストマイルを地元の事業者に委託する」といった柔軟な運用が合法的に可能になる。置き配の対応エリア拡大、配送スピードのさらなる向上、そして配送コストの抑制という三つの恩恵がユーザーに還元される可能性がある。
懸念も拭えない──安全管理という根本問題
一方で業界内からは懸念の声も上がっている。
緑ナンバー事業者が求められる安全管理水準──運行管理者の選任、定期点検、ドライバーの健康診断など──は、長年の事故や労働問題を踏まえて積み上げられてきたものだ。白ナンバーによる有償運送を拡大した場合、安全基準の形骸化や既存の緑ナンバー事業者との不公平な競争が生まれるリスクは否定できない。
また2026年4月からは逆に違法な白トラへの規制強化も同時に施行される。無許可の白ナンバー事業者に運送を委託した荷主に対して100万円以下の罰金が科される新制度だ。「弾力化」と「規制強化」が同じタイミングで走るという複雑な状況のなか、どこまでが合法でどこからが違法かを正確に把握することが、荷主にとっても事業者にとっても急務となっている。
変わる物流、変わる日常
「荷物が翌日に届く」「不在でも玄関前に置いてある」という体験は、今やすっかり当たり前になった。しかしその「当たり前」を支えるドライバーたちの労働環境は、限界に近い水準で維持されてきた。白ナンバー弾力化はその矛盾を解消するための一手であり、物流インフラの持続可能性を確保するための現実的な選択でもある。
Amazonの置き配がさらに進化する日は、思ったより早く来るかもしれない。
📚 引用・参照元
| # | 媒体・機関名 | 記事・資料タイトル | 公開日 |
|---|---|---|---|
| 1 | カーゴニュース | 国交省 白ナンバーのラストマイル有償運送を弾力化 | 2026年2月18日 |
| 2 | 国土交通省(mlit.go.jp) | 違法な「白トラ」への規制が令和8年4月1日から強化されます | 2025年11月21日 |
| 3 | 朝日新聞(smbiz.asahi.com) | 白トラ利用で荷主に罰則も 2026年4月施行の貨物運送事業法の改正点 | 2025年12月10日 |
| 4 | logi-today.com | 編集部が見た最新物流ニュース雑感(1/30-2/13) | 2026年2月13日 |
| 5 | hacobu(hacobu.jp) | 【2026年版】物流が抱える課題とは?15の課題や行政の取り組み | 2026年参照 |
| 6 | パナソニック オートモーティブ(driveboss) | ドライバー不足の現状と対策:2024年問題と輸配送システム | 2025年7月1日 |
| 7 | transcosmos-ecx.jp | 「物流2024年問題」は継続中!いま知るべき「2026年問題」とは | 2026年2月1日 |
| 8 | note(hakobito) | あえて「Amazon配送」なのか?私が感じる5つの圧倒的な魅力 | 2026年1月19日 |
| 9 | excite.co.jp(経済情報) | 物流「2024年問題」から2年。2026年に求められる配送インフラの変化 | 2026年2月16日 |
| 10 | 株式会社ポリゴン(protrude.com) | 【2026年最新】白トラ規制強化とは?規制内容や罰則、対策を解説 | 2025年12月16日 |
※本記事の情報は2026年2月20日時点のものです。法令・制度の詳細は国土交通省の公式発表をご確認ください。 ※引用・参照元の内容は各媒体の著作物です。本記事での使用は報道・情報提供目的によるものです。


