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2026年有期雇用契約の新ルール:企業が知るべき法的リスクと対応策

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今、有期雇用の「地殻変動」が静かに起きている

2026年、日本の雇用ルールは40年ぶりの大改正を迎えようとしている。契約社員・パート・アルバイトを雇用するすべての企業にとって、「知らなかった」では済まない変化の波が押し寄せている。無期転換・同一労働同一賃金・新たな明示義務。

3つの圧力が同時に強まる今年、人事担当者はどこから手をつければいいのか。最新情報をもとに徹底解説する。

まず押さえる「5年ルール」の現在地

有期雇用の根幹ルールは、労働契約法第18条に定める「無期転換ルール」だ。同一使用者との有期契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者の申込みにより無期労働契約に転換しなければならない。

この義務は2013年4月施行後すでに定着しているが、2026年現在も多くの企業が”グレーゾーン運用”をしているのが実態だ。

特に注意が必要なのは、無期転換申込権が発生する直前に「雇止め」を行う行為だ。厚生労働省は明確に「申込権の発生を免れる意図で行われた雇止めは、労働契約法の趣旨に照らして望ましくない」と警告しており、訴訟リスクは年々高まっている。意図的な雇止めが「解雇権濫用法理」(雇止め法理)に抵触した場合、企業は復職命令・未払い賃金の支払いを命じられるリスクがある。

2024年4月からすでに義務化されている「明示ルール」を再確認

2024年4月に施行された労働条件明示ルールの改正により、有期雇用契約者に対して以下の事項を契約締結・更新のたびに書面で明示することが義務付けられている。既に施行済みのため、未対応の企業は今すぐ点検が必要だ。

  • 更新上限の有無(更新できる回数・期間の上限)
  • 無期転換申込機会の明示(申込権が発生するタイミングで通知)
  • 無期転換後の労働条件(転換後の勤務地・職務・賃金を事前に提示)

この明示を怠ったまま雇止めを行うと、労働者から「期待権の侵害」を根拠に損害賠償を請求されるリスクが生じる。「更新の可能性あり」と曖昧に書き続けた契約書は、実質的に無期雇用と同等に扱われる危険性がある点も見落とせない。

2026年の新波:パート有期法・省令改正が動く

2025年12月25日、厚生労働省の労働政策審議会が報告書を取りまとめた。これに基づき、2026年春〜秋をめどにパートタイム・有期雇用労働法の省令・指針が改正される見通しだ(パブリックコメント経由後に正式施行、遅くとも2027年春までに完了の見込み)。今回の改正の4本柱は次のとおりだ。

第1の柱:同一労働同一賃金ガイドラインのさらなる明確化

これまで判断が難しかった「家族手当・住宅手当・退職手当・病気休職・夏季冬季休暇・無事故手当・褒賞」の6種類について、正社員と有期雇用者の間で待遇差が「問題となる例」「ならない例」が具体的に追加される。特に家族手当については「契約を繰り返し更新しており継続的な勤務が見込まれる有期雇用者には、正社員と同一の家族手当を支給しなければならない」と明記される。「長期間更新してきたのに家族手当なし」という慣行は、改正後は違法リスクが一気に高まる。

第2の柱:待遇説明義務の強化

有期雇用労働者が「待遇の相違について説明を求めることができる」旨を、労働条件通知書に記載することが義務化される方向だ。口頭でごまかせる時代が終わり、企業側は説明資料の整備と社内窓口の設置が必須となる。

第3の柱:公正な評価と正社員転換支援

有期雇用者に対する能力評価制度の整備と、正社員転換制度の構築が強く求められる。「多様な正社員」(勤務地限定・職種限定など)の導入促進も後押しされる。

第4の柱:行政による履行確保の強化

厚生労働省は企業への指導・立入調査を強化する方針。違反が発覚した際の行政指導・公表リスクが以前より高まる点も見逃せない。

2026年注目の「70歳雇用義務化」への伏線

2025年4月、65歳までの雇用完全義務化(高年齢者雇用安定法改正)が施行された。次のステップとして、65歳〜70歳の就業機会確保について「義務化」に向けた法改正の議論が2026年から本格化する見通しだ。現在は努力義務だが、65〜69歳の就業率が2024年時点で54.9%とKPI(51.6%)を超えており、義務化の機は「熟しつつある」と専門家は見る。定年後再雇用の有期雇用契約を多数抱える企業ほど、早期の対応設計が求められる。

企業が今すぐやるべき「7つのチェック」

2026年の法改正ラッシュに備えて、人事担当者はこの7点を最優先で点検してほしい。

まず契約書の更新上限と無期転換明示が正しく記載されているかを確認する。次に5年を超えて更新している有期雇用者が何人いるかをリストアップし、無期転換申込権の発生状況を把握する。続いて家族手当・住宅手当・病気休職の支給基準が正社員と有期雇用で異なっていないかを確認し、不合理な差があれば是正計画を立てる。さらに待遇説明窓口の設置と説明マニュアルの整備を進め、評価制度に有期雇用者が含まれているかを見直す。そして就業規則に無期転換後の労働条件が明記されているかを点検し、最後に定年後再雇用者の雇用契約が最新の法令に対応しているかを確認する。

【続報・2026年5月14日更新】告示公布——10月1日施行が確定、企業のカウントダウン開始

「春〜秋」だった改正の輪郭が、ついに”日付”になった。

① 同一労働同一賃金ガイドライン、令和8年10月1日施行で確定

項目内容
改正告示・省令公布2026年4月28日
施行日令和8年(2026年)10月1日
残り期間約5か月(2026年5月14日時点)
影響範囲パートタイム・有期雇用・派遣全般

元記事で「春〜秋をめど」と書いた改正が、10月1日に正式施行で確定した。家族手当・住宅手当・退職手当・無事故手当・賞与の5項目について、正社員と有期雇用者の差の有無を文書で根拠説明できる体制を、企業は5か月で構築する必要がある。

② 130万円の壁、4月から「労働契約ベース」で運用へ

2026年4月から、社会保険の扶養認定が「年収の実績」から「労働条件通知書ベースの見込み」へ変更された。

旧ルール新ルール(2026年4月〜)
実際の収入が130万円超で扶養外れ労働条件通知書の時給×時間×日数で判定
突発的残業で外れるリスク契約書の中身次第で扶養維持可能

契約書の文言一つで扶養が決まる時代——人事・経理・本人すべてが契約書を再点検すべき局面に。

③ 4月1日施行:労働安全衛生法改正で個人事業者保護

2026年4月1日、労働安全衛生法の改正により個人事業者等への安全衛生対策が施行。有期雇用ルールと並行して、フリーランス保護の制度設計が一気に進行している。

④ 派遣も含めた「比較」が標準実務に

厚労省が4月7日付で派遣労働者向け同一労働同一賃金チェックリスト・ガイドブックを更新。正社員/有期/派遣の3軸比較が、待遇説明義務の標準フォーマットになる流れ。

⑤ 「労働基準法40年ぶり大改正」は今回見送り

連続勤務の上限、週44時間特例の廃止、法定休日の特定、勤務間インターバル、解雇の金銭解決制度、労働者の定義拡大——これらは2026年改正では見送りとなり継続審議。次の波は2027〜2028年が本命視されている。

⑥ 5月14日時点・人事担当者の「再点検3点」

  1. 10月1日まで5か月——5項目(家族・住宅・退職・無事故・賞与)の合理的根拠を文書化する作業に着手済みか?
  2. 130万円の壁の新ルール——アルバイト・パートの労働条件通知書を全件再点検したか?
  3. 派遣を含む待遇比較表——正社員・有期・派遣の3軸で説明資料が用意できているか?

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「知らなかった」は通用しない時代

法改正は企業を苦しめるためのものではなく、雇用の安定と公正さを実現するための設計図だ。対応の早い企業は人材定着率が上がり、優秀な人材を引きつけやすくなる。

これが真のリターンだ。2026年の変化を「コスト」と見るか「投資」と見るかで、3年後の組織の強さは大きく変わってくる。

2026年有期雇用契約改正の3つのリスク(無期転換・同一賃金・明示義務)を警告バッジで示したイラスト。企業向け法改正解説記事のヘッダービジュアル。