「ハンタウイルス」と聞くと、急に怖い病気が入ってきたように感じるかもしれません。
ただ、まず冷静に見たいところです。
ハンタウイルスは、主にネズミなどのげっ歯類が持つウイルスです。
人は、ウイルスを含むネズミの尿・ふん・唾液に触れたり、それらが乾いて混ざったほこりを吸い込むことで感染することがあります。
日本で日常的に大流行している病気ではありません。
しかし、倉庫・空き家・納屋・物置・キャンプ場など、ネズミの痕跡がある場所では注意が必要です。

まず結論
ハンタウイルスで知っておきたいポイントは、この5つです。
- 主な感染源はネズミの排泄物
- 感染経路は、汚染されたほこりの吸入が多い
- 人から人へは、通常は広がりにくいとされる
- 日本では過去に感染報告があるが、現在はまれ
- 発熱・筋肉痛・息苦しさ・尿の異常があれば早めに受診
特に怖いのは、初期症状が風邪に似ていることです。
「ただの熱だろう」と見過ごすと、肺や腎臓に重い症状が出る場合があります。
ハンタウイルスで起こる病気
ハンタウイルス感染症は、大きく2つに分けられます。
| 病気 | 主な特徴 | 主な流行地域 |
|---|---|---|
| 腎症候性出血熱:HFRS | 発熱、腎障害、出血症状 | アジア、欧州など |
| ハンタウイルス肺症候群:HPS | 発熱、筋肉痛、急な呼吸困難 | 北米・南米など |
日本人が海外渡航やアウトドア、古い建物の清掃などで注意したいのは、
ネズミの排泄物を吸い込む環境に入ることです。
日本人へのリスク
日本では、ハンタウイルスに関する報告は過去にあります。
国立感染症研究所系の情報では、1960年代の大阪梅田地区での発生、1970年代〜1980年代にかけて医学系動物実験施設でラット取扱者に患者が出た事例が示されています。
また、厚生労働省検疫所は、腎症候性出血熱について
日本では1960〜70年代に発生報告があるが、その後はみられていないと説明しています。
一方、国立感染症研究所系の資料では、
日本の港湾地区のドブネズミがソウルウイルスを保有している可能性には注意が必要ともされています。
つまり、現実的にはこうです。
日本での見方
- 一般生活で過度に怖がる病気ではない
- ただしネズミが多い場所では油断しない
- 海外流行地域への渡航では注意が必要
- 古い倉庫や空き家の掃除では吸い込み対策が大事
怖がりすぎず、甘く見すぎず。
この距離感が大切です。
主な感染経路
ハンタウイルスは、主に以下の形で人に感染します。
- ネズミの尿・ふん・唾液が混ざったほこりを吸い込む
- 汚染されたものに触れた手で目・鼻・口を触る
- 傷口に汚染物が付着する
- まれにネズミに咬まれる
特に危ないのは、乾いたふんや尿をほうきや掃除機で舞い上げることです。
これ、現場仕事でも似ています。
粉じんが舞う環境で、見えないものを吸い込む怖さです。
ネズミの痕跡がある場所では、まず「吸わない」ことが一番です。
症状は?
ハンタウイルスの症状は、病型によって変わります。
ハンタウイルス肺症候群の症状
ハンタウイルス肺症候群、HPSは肺に重い症状を起こすタイプです。
初期症状
- 発熱
- 強いだるさ
- 筋肉痛
- 頭痛
- 悪寒
- めまい
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
初期はインフルエンザや風邪に似ています。
進行した症状
- 咳
- 息苦しさ
- 胸の圧迫感
- 呼吸困難
- 酸素不足
- 肺水腫
厚生労働省は、HPSについて
発熱と筋肉痛のあと、咳や急速に進む呼吸困難が特徴としています。
致死率についても、厚生労働省は40〜50%、CDCは呼吸器症状を発症した人の死亡率を約38%としています。
数字は資料や地域で差がありますが、重症化すれば危険な病気です。
腎症候性出血熱の症状
腎症候性出血熱、HFRSは腎臓に症状が出やすいタイプです。
主な症状
- 突然の発熱
- 頭痛
- 悪寒
- 脱力感
- めまい
- 背部痛
- 腹痛
- 嘔吐
- 顔の赤み
- 目の充血
- 発疹
- 血尿
- 蛋白尿
- 尿量の減少
重症型では、低血圧やショック、急性腎障害を起こすことがあります。
厚生労働省検疫所は、重症型では3〜15%が死亡すると説明しています。
潜伏期間
潜伏期間は病型により差があります。
| 病型 | 潜伏期間の目安 |
|---|---|
| 腎症候性出血熱 | 10〜20日程度 |
| ハンタウイルス肺症候群 | 1〜5週間程度 |
CDCでは、HPSの症状は感染したげっ歯類との接触後、1〜8週間で出ることがあるとしています。
つまり、ネズミの痕跡がある場所を掃除した直後だけでなく、
数週間後の発熱や息苦しさにも注意が必要です。
人から人へうつる?
基本的には、ハンタウイルス感染症はネズミ由来です。
厚生労働省検疫所は、腎症候性出血熱について
ヒトからヒトへの感染例は報告されていないとしています。
また、北米のハンタウイルス肺症候群でも、
ヒトからヒトへの感染は起こらないと考えられています。
ただし、南米のアンデスウイルスでは、人から人への感染が示された事例が報告されています。
そのため、海外流行地域では現地情報の確認が必要です。
受診すべきサイン
次のような場合は、早めに医療機関へ相談してください。
- ネズミのふんや尿がある場所を掃除した
- 倉庫、空き家、納屋、山小屋などに入った
- その後に発熱や筋肉痛が出た
- 咳や息苦しさがある
- 尿が少ない、血尿がある
- 強いだるさ、めまい、腹痛が続く
受診時には、必ず
「ネズミの痕跡がある場所に入った」
「掃除をした」
と伝えることが大事です。
医師が感染経路を考える手がかりになります。
予防法
予防の基本は、ネズミとの接触を減らすことです。
家や倉庫での対策
- 食べ物を出しっぱなしにしない
- 米や食品は密閉容器で保管
- 壁や床の隙間をふさぐ
- ネズミのふんを見つけたら素手で触らない
- 掃除機やほうきで乾いたふんを舞い上げない
- 消毒液で湿らせてから拭き取る
- 使い捨て手袋とマスクを使う
- 作業後は手洗い
厚生労働省検疫所も、汚染された場所の掃除では
ほこりを巻き上げる掃除機やほうきを使わず、漂白剤で十分に湿らせてから拭き取る方法を示しています。
関連アイテム
ネズミ対策や掃除時の衛生管理に使いやすいものです。
※これらは感染を完全に防ぐものではありません。作業環境に合わせて使ってください。
よくある質問
ハンタウイルスは日本人にも関係ありますか?
関係はあります。
ただし、日本で現在広く流行している病気ではありません。過去に国内報告はありますが、近年の日常生活で過度に恐れる必要は低いと考えられます。一方で、ネズミの多い場所や海外流行地域では注意が必要です。
どんな症状が出ますか?
発熱、筋肉痛、頭痛、悪寒、吐き気、下痢、腹痛などから始まることがあります。重症化すると、呼吸困難や肺水腫、腎機能障害、尿量低下などが出ることがあります。
ネズミを見ただけで感染しますか?
見ただけでは感染しません。
主なリスクは、ウイルスを含むネズミの尿・ふん・唾液に触れることや、それらが混ざったほこりを吸い込むことです。
掃除機でネズミのふんを吸っても大丈夫?
避けた方が安全です。
ほこりを舞い上げるため、汚染された粒子を吸い込むリスクがあります。消毒液などで湿らせてから、手袋を使って拭き取る方法が推奨されています。
ワクチンはありますか?
厚生労働省検疫所は、ハンタウイルス感染症の予防接種について、日本にはないと説明しています。
まとめ
ハンタウイルスは、ネズミなどのげっ歯類から人に感染するウイルスです。
日本で大流行している病気ではありません。
しかし、ネズミのふんや尿がある場所では、感染リスクをゼロとは言えません。
大切なのは、
- ネズミの痕跡を素手で触らない
- 乾いたふんを掃除機で吸わない
- 作業前に換気する
- 消毒液で湿らせてから拭く
- 発熱や息苦しさがあれば受診する
という基本です。
見えないウイルスは、静かな相手です。
だからこそ、昔ながらの「清潔にする」「吸い込まない」「手を洗う」が、今も強い守りになります。
参照元
- 厚生労働省:ハンタウイルス肺症候群
- 厚生労働省:腎症候性出血熱
- 厚生労働省検疫所 FORTH:ハンタウイルス感染症
- 国立感染症研究所系情報:ハンタウイルス肺症候群詳細
- CDC:Hantavirus Overview
※情報は公的機関の資料をもとに整理しています。症状がある場合は自己判断せず、医療機関に相談してください。

