あの日、プロが命を落とした
北海道の広い道を、白バイが駆け抜ける。
交通取り締まりの最前線に立つプロフェッショナルが、まさか自らの命を落とすことになるとは——。
2021年9月、北海道苫小牧市の交差点で白バイ隊員(当時32歳)が大型トラックと衝突し、殉職するという痛ましい事故が起きました。
この裁判は最高裁まで争われ、2025年8月に上告棄却でトラック運転手の有罪(禁錮1年・執行猶予3年)が確定しています。
白バイの推定速度は時速120km。
右折するトラックとの「右直事故」でした。
北海道は2025年の交通事故死者数が129人(前年比+25人)と全国ワースト3位。
この土地で運転するすべての人にとって、他人事ではありません。
この記事では、白バイ事故の背景にある「北海道特有の危険因子」と、あなた自身が今日から実践できる安全対策を徹底的にお伝えします。
苫小牧・白バイ死亡事故の全貌
事故の概要を整理します。
2021年9月13日午前8時50分ごろ、苫小牧市内の丁字路交差点で、交通違反の取り締まりのため直進走行していた白バイと、右折中の大型トラックが衝突しました。白バイに乗っていた北海道警交通機動隊の及川翔平巡査部長(殉職後二階級特進で警部補)が亡くなっています。
裁判で大きな争点となったのは「予見可能性」です。
トラック運転手側は「時速120kmで接近する白バイを予見し、回避するのは不可能」と無罪を主張しましたが、一審の札幌地裁、控訴審の札幌高裁、そして2025年8月の最高裁すべてで退けられました。
一方で、北海道警内部でも「白バイの制限速度は通達で100km」とされている中、120kmでの走行だった点は波紋を広げました。
プロであっても「絶対安全」はない。
の事実が、この事故のもっとも重い教訓です。
北海道の道路が”危険装置”に変わる瞬間
なぜ北海道では、こうした事故が起きやすいのでしょうか。
道内を飛び回って仕事をしている身として、日々肌で感じる「この土地ならではの怖さ」があります。
直線道路の魔力。
北海道の道路は本州とはまるで別世界です。地平線まで続くような直線区間、信号のない交差点、片側一車線でも道幅がやたら広い。
こうした環境に慣れてくると、無意識のうちにアクセルを踏み込みがちになります。
一般車両の平均速度が高くなるこの環境は、白バイの追跡任務におけるリスクも当然引き上げます。
「十勝型事故」の恐怖。
北海道では「コリジョンコース現象」による事故が昔から問題視されてきました。
JAFの解説によると、見通しの良い平坦な交差点で、同じ速度で交差方向から近づく車が”止まって見える”錯覚に陥り、そのまま出会い頭に衝突するというものです。
十勝地方で多発したことから「十勝型事故」とも呼ばれ、広大な農地と防風林がつくる独特の風景が、この錯覚を助長します。
冬は別次元の危険。
北海道警の統計によると、死亡事故の多くは「非市街地の直線道路」で発生しており、スリップが要因の死亡事故は非市街地が約9割を占めます。
凍結路面、ホワイトアウト、吹雪——
冬季の北海道の道路は、ベテランドライバーでも一瞬の判断ミスが命取りになります。
白バイ隊員が背負う”見えないリスク”
交通警察の花形とも言われる白バイ隊員ですが、現場の過酷さは想像以上です。
違反車両を発見してから追跡・捕捉するまで、隊員は高度な運転技術と瞬時の判断力をフル稼働させています。
問題は、追跡中に周囲の一般車両がどう動くかが予測しきれない点にあります。
急ブレーキ、急な進路変更、交差点への無減速進入——
一般ドライバーの「予期せぬ動き」が、白バイ隊員にとっての最大のリスクです。
さらに、サイレンの音が届かないケースも少なくありません。
窓を閉め切ってカーオーディオの音量を上げていれば、後方から迫る緊急車両の接近に気づけないのは当然のこと。
北海道の長い直線道路では、風切り音やロードノイズも大きく、サイレンがかき消されやすいという事情もあります。
白バイ隊員の事故は、隊員だけの問題ではありません。
私たち一般ドライバーの「気づかなさ」が事故を生んでいる——
そう考えるべきです。
今日からできる5つの安全対策
ここからが本題です。この記事で一番伝えたいことは、「あなたが明日から実践できる具体的な行動」です。
1. ミラー確認を”クセ”にする。
ルームミラーとドアミラーを5〜10秒おきにチラッと確認する習慣をつけましょう。後方から接近する白バイやパトカーに早く気づければ、パニックにならず余裕を持って対応できます。
2. カーオーディオの音量は”会話できるレベル”に。
サイレンの音が聞こえなければ、譲りようがありません。特に北海道の直線道路では、風切り音に負けない程度の「静けさ」を車内に確保してください。道路交通法第40条は、緊急車両への進路譲渡を義務づけています。違反すれば罰金と違反点数が科されます。
3. 交差点では必ず減速+目視。
信号のない交差点に進入する際は、十分に減速し、左右を目視で確認してください。「十勝型事故(コリジョンコース現象)」を防ぐには、意識的に頭を動かして左右を見るしかありません。ミラーだけでは死角に入る車に気づけません。
4. “追われている車”の存在を想像する。
パトカーや白バイに追跡されている車両は、逃走のために予期せぬ動きをする可能性があります。前方で不自然な蛇行や急加速を見かけたら、車間距離を大きく取って近づかないこと。巻き添えを防ぐ最善策です。
5. 緊急車両が来たら「左に寄って一時停止」が原則。
交差点付近では交差点を避けて左に寄り一時停止。交差点以外では左に寄って進路を確保。一方通行で左寄せが邪魔になる場合は右側に寄ります。焦って急ブレーキや急ハンドルを切るのは逆に危険です。
万が一に備える装備も重要
事故はどれだけ注意しても起きるときは起きます。だからこそ「記録」と「備え」が大事です。
ドライブレコーダーは”お守り”
北海道のような長距離ドライブが日常の地域では、ドライブレコーダーはもはや必需品です。万が一の事故時に客観的な証拠が残るだけでなく、あおり運転や当て逃げの抑止力にもなります。
2026年現在、前後2カメラタイプやデジタルミラー
一体型が主流になっており、コムテックやケンウッドの人気モデルなら2万円台から手に入ります。
▼ ドライブレコーダーをチェックする
冬道対策グッズも必須
北海道で運転するなら、スタッドレスタイヤの性能チェックはもちろん、車載用の脱出キットや三角表示板の常備も忘れずに。特に郊外の長距離移動が多い方は、緊急脱出ハンマーやブースターケーブルの備えがあると安心です。
まとめ——全員が無事に帰るために
北海道の道は、美しい。地平線まで伸びるまっすぐな道路、雄大な山々と牧草地の風景、夕暮れのオレンジに染まるアスファルト。
でもその爽快感の裏には、本州とは異質の交通リスクが静かに潜んでいます。
白バイ隊員も、トラック運転手も、出張で道内を走り回る自営業者も、旅行者も——
誰もが「無事に帰りたい」と思っている点では同じです。
苫小牧の事故で失われた32歳の命。
その教訓を無駄にしないために、私たちにできることはシンプルです。
ミラーを見る。
音量を下げる。交差点で減速する。
「かもしれない」と想像する。
たったそれだけのことが、あなたと誰かの命を守ります。
北海道の道を、全員が安全に走り抜けられる日を——。
※この記事は2026年4月1日時点の情報に基づいています。事故の詳細は警察発表および報道をもとに記述しています。 ※本記事にはアフィリエイトリンクが含まれます。購入による追加費用は発生しません。

