朝、スーパーで買った惣菜セットと、昨夜ネットで注文した日用品が、同じトラックで同じ時間に届く。
そんな光景が、2026年の日本で静かに現実になろうとしています。
「物流の2024年問題」
「ドライバー不足」
「再配達率」
これだけ課題が語られながらも、業界が長年解決できなかったラストマイルの非効率に、新しい構造改革の波が押し寄せています。
キーワードは「混載」「ラウンドマッチング」、そして「AI一元管理」です。
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なぜ今、ネットスーパー×宅配が動くのか
ネットスーパーの国内市場規模は、富士経済の予測によれば2026年に約3,130億円(2024年比+22%)に達する見通しです。食品・飲料・酒類を含むBtoC-EC全体では3兆1,163億円(経済産業省、2024年度)と巨大市場へと成長し続けています。
しかし、市場の拡大と逆行するように、配送インフラは悲鳴を上げています。2024年の時間外労働規制(年960時間上限)によるドライバー不足は深刻で、2028年には約27.9万人の人手不足が予測されています。ネットスーパーは「当日ならないと件数が確定しない」という特性上、需要の波動が大きく、積載率が上がりにくい構造的な弱点を抱えていました。
この矛盾を解消するために登場したのが、ネットスーパーと来店宅配を同一トラックで運ぶ「混載配送」という発想です。
DeLink──ネットスーパーと来店宅配の統合
2026年1月28日、物流テックスタートアップの株式会社ルーフィ(東京都中央区、代表取締役社長:渡邊泰章)は、ネットスーパーと来店宅配を混載するネットワークシステム「DeLink」を正式リリースしました(PR TIMES、2026年1月28日)。
これまでネットスーパーと来店宅配(店舗購入後に自宅へ当日配送するサービス)は、受付システムが別々に存在していたため、同じトラックで運ぶことは実質不可能でした。配送業者がアナログで対応するしかなく、車両1台に荷物が半分しか積まれないまま走る「空気輸送」が常態化していました。
DeLinkはこの壁を、ドライバー向け運行アプリ「ハコログGO」を介してネットスーパーの受注システムとAPIで接続することで打ち破りました。ネットスーパーと来店宅配の配送情報がリアルタイムに一元統合され、AIが最適ルートを自動算出。単店舗単位ではなく、エリア全体の配送件数を集約することで需要の波動を吸収し、積載効率を抜本的に改善します。
初導入先はイオン九州株式会社で、現在は全国展開を準備中です。ドライバーはアプリ1本で複数社の荷物を効率よく配達でき、配達帳票のペーパーレス化により個人情報の紛失リスクも排除されました。
ラウンドマッチング──「帰り便」で業界の壁を越える
ネットスーパー×来店宅配の融合が小売の現場を変えるとすれば、もう一つの革命は業種の垣根を越えた場所で起きています。
2026年1月27日、株式会社ロッテとサッポログループ物流株式会社は、関東〜東北間での「ラウンドマッチング輸送」を冬季限定で開始すると発表しました(サッポロホールディングス、2026年1月27日)。
仕組みはこうです。往路では、ロッテの狭山工場(埼玉)からチョコパイやコアラのマーチなどの菓子類を宮城県の東北営業倉庫へ輸送します。
問題はその後、
これまで関東への復路は空車回送が常態化しており、ロッテにとって長年のコスト課題でした。
そこで着目したのが、冬季に需要が落ちるサッポログループ物流の「閑散期」でした。宮城県のサッポロビール仙台工場から千葉県のサッポロビール千葉工場へRTD(チューハイ等)を運ぶルートを復路に組み込むことで、往路・復路とも荷物が積まれた状態で走れる「ラウンドマッチング輸送」が実現しました。
菓子とビールではパレット規格が異なる点は、長年ロッテの菓子輸送を担ってきた株式会社曙運輸(埼玉県越谷市)が技術支援と専用資材を提供することで解決。この取り組みによって、単独輸送と比較してCO₂排出量を年間約5トン削減、空車走行距離を年間約7,600km削減する効果が見込まれています。
国交省が後押しする「シェア型物流」の時代
こうした民間の取り組みを国が政策面から後押しする動きも加速しています。国土交通省は2025年11月7日、「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会」の提言を公表し、共同配送・混載・AI活用を明示的に推進する方向性を示しました。
さらに2026年4月には物流効率化法(貨物自動車運送事業法改正)が施行され、大手荷主には物流負荷低減の取り組みの報告義務が課されます。「とにかく送料無料・翌日配達」という商慣行の見直しが企業レベルで義務化される時代が、すぐそこまで来ています。
また白ナンバートラックの有償運送弾力化(2026年4月施行予定)も相まって、ラストマイルの担い手を多様化する法整備が一気に進んでいます。
消費者には何が変わるのか
「ネットスーパーと宅配便が同じトラックで来る」という変化は、消費者にとってどんな意味を持つのでしょうか。
まず配達時間のシンプル化が進みます。複数の荷物を一度に受け取れることで、在宅待機の回数が減り、再配達の負担も軽減されます。次に送料・配送費の低減圧力が働きます。混載により1件あたりのコストが下がれば、無料配送の閾値引き下げや、ネットスーパーの利用料金に反映される可能性があります。
長期的には、地方や過疎地でも食品+日用品+医薬品を一台のトラックが届ける「複合型ラストマイル」が標準になるかもしれません。宮崎県西米良村のように3社の宅配便を束ねて配送する事例は、すでに各地で生まれ始めています(国土交通省ラストマイル配送現状資料)。
まとめ:「シェア」が物流インフラを再設計する
ネットスーパーと来店宅配の混載(DeLink)、菓子メーカーとビールメーカーの積み合わせ(ロッテ×サッポロ)、
そして2026年4月の法改正
これらは無関係に見えて、すべて同じ原理で動いています。「一社で抱え込む」から「シェアで最適化する」への転換です。
トラックという有限なリソースを、競合他社・異業種・個人の担い手で分かち合い、AIが全体を最適化する。この構造が完成したとき、日本のラストマイルは本当の意味で「静かな革命」を終えることになるでしょう。
参考・引用元
| # | 媒体・機関 | 記事・資料名 | 掲載日 |
|---|---|---|---|
| 1 | PR TIMES(株式会社ルーフィ) | 「ネットスーパーと来店宅配の混載配送システム『DeLink』をリリース!」 | 2026年1月28日 |
| 2 | LNEWS | 「ルーフィ/ネットスーパーと来店宅配の荷物、混載配送システムをリリース」 | 2026年1月28日 |
| 3 | online.logi-biz.com | 「ルーフィ-ネットスーパーと来店宅配の混載配送システム『DeLink』をリリース」 | 2026年1月29日 |
| 4 | サッポロホールディングス | 「ロッテとサッポログループによるラウンドマッチング輸送を開始」 | 2026年1月27日 |
| 5 | LNEWS | 「サッポログループ物流/ロッテと冬季限定のラウンドマッチング輸送開始」 | 2026年1月27日 |
| 6 | Yahoo!カービュー(carview) | 「菓子とビールのラウンドマッチング輸送…CO₂年間5トン削減」 | 2026年1月29日 |
| 7 | 富士経済 | 国内ネットスーパー市場規模予測(2026年約3,130億円) | 2024年4月 |
| 8 | diamond-rm.net | 「堅調のネットスーパー市場──停滞感の正体と差別化への道」 | 2026年1月27日 |
| 9 | 国土交通省 | 「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会」提言公表 | 2025年11月7日 |
| 10 | 国土交通省 | ラストマイル配送を取り巻く現状・課題PDF | 2025年公表 |
| 11 | hacobu.jp | 「ラストワンマイル問題とは?現状や解決策」 | 2026年1月27日 |
| 12 | 経済産業省 | 令和6年度電子商取引に関する市場調査(BtoC-EC食品3兆1,163億円) | 2025年8月26日 |


