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中国産なのに「宇治抹茶」──老舗の怒り、裁判、そしてあなたが本物を選ぶべき理由

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何が起きているのか

Amazonや楽天を開いて「宇治抹茶」と検索すると、驚くほど安い商品が並んでいる。パッケージには「宇治抹茶」と大きく書かれ、高級感漂うデザインが添えられている。ところが産地欄を注意深く見ると、「上海」「中国」の文字が記されている。

これが今、日本の老舗茶業界を揺るがしている問題の核心だ。

中国・上海に「宇治抹茶(上海)有限会社」という企業が存在する。同社は2006年から準備を開始し、自社ホームページに「抹茶の起源は中国にある、『抹茶を故郷に返す』行動は京都宇治の茶人から支持された」と記している。中国では「宇治抹茶」が商標登録されていないため、社名に使うこと自体は法律上問題がない。しかしその社名を冠した抹茶が、日本の老舗ブランドのそれと見紛う外観で世界市場に流通しているとなれば、話は全く別次元になる。

老舗の怒り

問題を正面から訴えたのが、江戸・元禄期創業の宇治抹茶老舗「丸久小山園」だ。同社の小山元也社長は、中国のオンラインショップで自社の代表商品「五十鈴」「若竹」「青嵐」とまったく同じ名称の商品が堂々と売られているのを発見した。

「うちの銘柄そのままですね」と絶句した小山社長。問題の商品は宇治抹茶の名称を掲げながら、中身は中国産の茶葉を使ったまったく別物だった。比較してみると、丸久小山園の抹茶は深みのある鮮やかな緑色を示すのに対して、中国産のものは黄色っぽくくすんでいる。茶を点てて飲んでみると、本物が持つ「覆い香」と呼ばれる香ばしい香りと甘みが感じられず、渋みだけが口に広がった。

「先人がずっと積み重ねてきた技術でもあるし、大事に育ててきたお茶そのもの。そこを侵されることは憤りというか、本当に悔しく思います」

小山社長の言葉が、この問題の深刻さを物語っている。

裁判から和解へ

事態は法廷闘争にまで発展した。丸久小山園は2022年12月、宇治市内の茶問屋「合名会社北川半兵衛商店」を訴えた。この茶問屋が中国の取引先に「独占販売代理店証明書」と「宇治抹茶証明書」を交付したことが契機となり、その取引先が丸久小山園の商品名を使った宇治抹茶でない商品を中国国内で製造・販売するようになったためだ。

京都地裁では一度老舗側の訴えが棄却されたが、大阪高裁での審理を経て、2026年1月9日付けで和解が成立した。北川半兵衛商店は証明書の交付が問題の契機となった事実を認め、両者は「今後、他の宇治抹茶製造業者とも協同してブランド価値を維持・発展させる」と合意した。原告の丸久小山園は約7700万円の請求を放棄した。金銭的には老舗側が折れた形だが、問題の事実関係が公式に認定されたことの意義は大きい。

なぜ守れないのか

実はこの問題には構造的な難しさがある。「宇治抹茶」という名称は中国で商標登録されておらず、中国企業が社名や商品名に使うことは中国法上、原則として問題がない。立命館大学法学部の宮脇正晴教授は「品質誤認が生じれば社名であっても違法との評価になりうる」と指摘するが、そのためには中国現地で民事訴訟を起こさなければならず、費用と時間のコストが極めて大きい。しかも同様の問題を抱える中国企業は1社にとどまらない。国家レベルのブランド保護の仕組みなしには、個別企業の努力だけでは追いつかないのが実情だ。

本物の見極め方

騒動の全体像を理解したうえで、消費者として何ができるかを整理しておきたい。

まず最重要なのが原産地・加工地の確認だ。「宇治抹茶(京都府産)」のように、具体的な地名と都道府県が明記されているものを選ぶ。「Made in Japan」の表記だけでは不十分で、原料が外国産でも加工のみ日本国内というケースが存在する。すべての工程が日本国内で行われているかを、工程ごとに確認することが重要だ。

次に色と香りを手がかりにする。本物の高品質な宇治抹茶は深みのある鮮やかな緑色をしており、海苔のような「覆い香」とほんのり甘い香りが特徴だ。くすんだ黄緑色、青臭い匂い、口の中でザラつく舌触りは低品質品や劣化のサインだ。

価格の目安も判断材料になる。高品質な抹茶の国内正規流通価格は20gで1,000〜3,000円程度が目安とされる。これより極端に安い商品は、粉末緑茶や着色料を混合した別物である可能性が高い。逆に海外サイトでは正規品が3倍近い価格で転売されるケースも確認されているため、「高い=本物」とも一概には言えない。

AmazonなどのECサイトで購入する際は「正規販売店」の表示を必ず確認してほしい。フリマアプリや個人輸入サイトは偽物・転売品のリスクが格段に上がる。

ブームが生んだ皮肉

世界的な抹茶人気は計り知れない規模になっている。財務省の貿易統計によれば、2023年の抹茶を含む緑茶の輸出額は292億円と過去最高を更新し、10年前と比べて約4倍に膨らんだ。しかしこのブームの裏側で、京都・宇治や愛知・西尾といった有名産地では品薄・売り切れが続出し、老舗では入荷待ち数か月・購入個数制限というケースが増えている。日本が世界に誇るこのブランドは、需要の爆発とブランド侵害という二重の脅威にさらされているのだ。

まとめ

今回の訴訟・和解は氷山の一角に過ぎない。中国をはじめ世界各地で、宇治抹茶の名を借りた粗悪品・模倣品が流通し続けている現実は、法廷の外では何も変わっていない。私たち消費者が正しい知識を持ち、本物を選ぶ行動を積み重ねることが、何百年もかけて守り育てたブランドを支えることに直結する。少し値が張っても産地と製造者が明確な正規品を選ぶ──その一つの選択が、日本の食文化を未来に繋ぐ力になる。

参考文献・引用元一覧

#媒体記事タイトル公開日
1MBS毎日放送中国産なのに宇治抹茶?商品名も同じ”模倣品”に京都の老舗企業が怒り2025年5月1日
2丸久小山園(公式)和解による訴訟の解決に関するお知らせ2026年2月13日
3朝日新聞中国での抹茶販売めぐる、京都の老舗が争った訴訟 高裁で和解が成立2026年2月13日
4抹茶タイムズその抹茶、本当に安全?海外輸入品に潜むリスクと正しい見分け方2025年8月4日

⚠️ 本記事は公開情報に基づいた情報提供を目的としています。
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京都産の鮮やかな緑色の本物の宇治抹茶(左)と、くすんだ黄緑色の中国産模倣品(右)を並べて比較したイラスト