42兆円の”ツケ”が、今まさに回ってきている
コロナ禍の2020〜2022年、国は中小企業・個人事業主を救うため「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を大規模展開した。総額約42兆円・約245万件という前代未聞の規模だ。
あれから数年
その”ツケ”が今、静かに、しかし確実に爆発している。
数字で見るゼロゼロ融資倒産の実態
帝国データバンク・東京商工リサーチの最新データがこれだ。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| ゼロゼロ融資後倒産(累計) | 2,272件超(2025年7月時点) |
| 2025年のゼロゼロ融資後倒産 | 636件(3年連続600件超) |
| 2025年上半期倒産件数 | 5,146件(前年同期比3.1%増) |
| 2025年倒産件数(年間) | 約1万件超(12年ぶり高水準) |
| 2025年消滅企業(全業種) | 約8万社(個人事業主含む) |
| 2026年1月ゼロゼロ融資後倒産 | 28件(前年同月比20%減) |
件数自体は2025年後半から減少傾向に入っているが、2026年前半は返済ピークとされており予断を許さない状況だ。
ゼロゼロ融資とは何だったのか?
おさらいしておく。
ゼロゼロ融資とは、コロナ禍で売上が激減した中小企業・個人事業主を対象に、無利子・無担保・最大3年間返済猶予という破格の条件で実施された公的融資制度だ。日本政策金融公庫や民間金融機関を通じて展開された。
制度の趣旨は正しかった。しかし結果として三つの深刻な問題を生んだ。
まず「ゾンビ企業の延命」だ。本来なら市場から退出すべき収益力のない企業が、融資によって生き延びた。日経新聞はこれを「ゼロゼロ融資でまひした規律」と表現し、ゾンビ企業が16万社に達すると報じた。
次に「資金使途の不正」だ。帝国データバンクによると2025年のコンプライアンス違反倒産278件のなかに「資金使途不正」が含まれており、事業資金ではなく個人的な用途に流用されたケースも確認されている。
そして三つ目が「返済意識の希薄化」だ。「どうせ国が何とかしてくれる」という空気が広がり、返済計画を真剣に立てないまま借りた事業者が続出した。これこそがモラルハザードの教科書的な発現だ。
これはモラルハザードの極みか?
日刊工業新聞の社説(2023年5月)はこう断じた。
「本来なら事業継続できない企業まで延命させたモラルハザード(倫理観の欠如)を招いた感は否めない」
保険理論で言えば「安全網があるから不注意になる」——ゼロゼロ融資がまさにこれだ。無担保・無利子という”完璧な安全網”が、借り手の返済意識と金融機関の審査意識を同時に低下させた。
ただし一方的に「モラルハザードの極み」と断罪するのも公平ではない。コロナという未曽有の危機で、まともに判断できる状況ではなかった事業者も多い。問題の本質は制度設計の甘さと出口戦略のなさにある。
自営業者・個人が今すぐ取るべき資産防衛術
他人の倒産を笑っている場合じゃない。2026年は取引先・仕入れ先・元請けの倒産リスクが高まる年だ。自分の身は自分で守る。
① 取引先の信用リスクを定期チェック 帝国データバンクや東京商工リサーチの無料情報を活用し、主要取引先の財務状況を把握しておく。「突然取引先が倒産」は売掛金の焦げ付きに直結する。
② 売掛金は早期回収・分散が鉄則 一社依存の売掛金は倒産連鎖リスクの塊だ。回収サイトを短くする交渉、複数取引先の分散、場合によってはファクタリング活用も検討する。
③ 自分自身のキャッシュフローを分厚くする 小規模企業共済(月最大7万円・全額所得控除)やiDeCo(月最大6.8万円)で事業リスクと切り離した個人資産を積み上げる。事業が傾いても個人資産は守られる。
④ 借入は「返せる額」だけ借りる ゼロゼロ融資の教訓はシンプルだ。「借りられる額」と「返せる額」は別物。低金利・無担保だからといって上限まで借りるのはモラルハザードへの第一歩。
⑤ 緊急時の現金3〜6ヶ月分を手元に置く 売上がゼロになっても3〜6ヶ月は事業と生活を維持できるキャッシュバッファーを確保しておく。これが最強のリスクヘッジだ。
2026年の展望 — 嵐はまだ終わっていない
2026年前半はゼロゼロ融資の返済がピークを迎える。物価高・人件費上昇が続く中、返済原資を確保できない企業の「息切れ倒産」はまだ続く可能性が高い。
帝国データバンクの景気見通し調査では、2026年を「踊り場局面」と見る企業が43%で最多。回復と停滞の狭間で、体力のない事業者がふるい落とされる年になりそうだ。
北海道の現場を飛び回っていると、肌感覚でわかる。仕事はあるのにキャッシュが回らない、発注が突然止まる。
そういう話が増えている。数字の裏には、生きた現実がある。
参照元
| # | メディア | 内容 | リンク |
|---|---|---|---|
| 1 | 帝国データバンク | 2025年倒産集計・ゼロゼロ融資後倒産636件 | https://www.tdb.co.jp/report/bankruptcy/aggregation/20260113-bankruptcy2025/ |
| 2 | 東京商工リサーチ | 2026年1月ゼロゼロ融資後倒産28件 | https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202388_1527.html |
| 3 | 帝国データバンク | 2025年上半期ゼロゼロ融資後倒産316件 | https://www.tdb.co.jp/report/economic/20250702yushigotousan/ |
| 4 | Forbes Japan | 2025年倒産10年で最多・倒産確率格差 | https://forbesjapan.com/articles/detail/87561 |
| 5 | 東洋経済オンライン | ゼロゼロ融資42兆円のツケ | https://toyokeizai.net/articles/-/729695 |
| 6 | 日本経済新聞 | ゾンビ企業16万社・モラルハザード指摘 | https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB12A3O0S2A211C2000000/ |
| 7 | 日刊工業新聞(社説) | モラルハザード・延命問題の指摘 | https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00674060 |
⚠️ 本記事は情報提供を目的としています。融資・節税・資産運用に関する判断は、税理士・中小企業診断士等の専門家にご相談ください。


