世界最大のモバイル展示会で電撃発表
2026年3月2日、スペイン・バルセロナで開幕した世界最大のモバイル展示会「MWC Barcelona 2026」。NTTグループのブース(Hall3 3M29)でNTTドコモが発表したのが、パーソナルAIエージェント「SyncMe(シンクミー)」だ。同日から先行モニター5,000人の募集を開始し、2026年春にパイロット版、夏に全ユーザー向けサービスを予定している。
SyncMeとは何か
「先回りする相棒AI」
SyncMeはChatGPTやGeminiと根本的に異なる設計思想を持つ。一般的な生成AIは「使い始めにはユーザーのことを何も知らない」ゼロスタート状態だが、SyncMeはdアカウントに紐づいた決済データ・位置情報・写真を初回から活用し、セットアップ直後から自分仕様にパーソナライズされた状態で動き出す。
前田義晃社長はMWC会場でこう語った。
「携帯電話自体が究極のパーソナルエージェント。それを進化させることが我々のミッション。相棒のように他愛のないやり取りをし、安心感や豊かさを感じていただけるサービスにしていきたい」
2つのキャラクターと役割分担
SyncMeを起動すると、2体のキャラクターが出迎える。ポケモン「ピカチュウ」などを手がけたイラストレーター・にしだあつこ氏がデザインした。
- ワラピィ(ワラビーモチーフ):日常会話でユーザーに寄り添うキャラクター
- ヨミドーリ(鳩モチーフ):バックグラウンドで情報収集を行うキャラクター
「寄り添うキャラクターが役に立ちすぎると、急に頭が良くなりすぎる感じになってしまう」という設計上の課題を、役割を分けることで解決した。使い込むほどモーションが増え、会話のトーンもフランクになっていく仕組みだ。将来はキャラなしモードも搭載予定で、シニア層など幅広い世代への対応も視野に入る。
最大の武器
dアカウントデータによる「コールドスタート撃退」
SyncMeの核心技術は決済データと位置情報の掛け合わせだ。
「決済があると、どういった店舗で購買されるかから興味が分かる。ライフスタイルやご家庭の構成も推測できる」(竹花幸伸・R&D戦略部 AI・エージェント担当主査)
初回起動時には「#今のワタシ診断」として、自分を表す写真20枚をギャラリーから選ぶ。写真のメタデータとdアカウント情報を組み合わせ、即座にパーソナライズが効いた状態からスタートできる。「近くのおすすめレストランは?」と聞いたとき、肉好きな人と魚好きな人では出てくる店が変わる、という具合だ。
基本スペックまとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | SyncMe(シンクミー) |
| 発表日 | 2026年3月2日(MWC Barcelona) |
| 料金 | 基本無料(アイテム課金・サブスク検討中) |
| 利用条件 | キャリア不問・dアカウントがあれば使用可 |
| 対応OS | Android 13以上・iOS 16.3以上 |
| 使用LLM | Google・OpenAI・NTT「tsuzumi」を用途別に使い分け |
| 現在の状況 | 先行モニター5,000人募集中(dポイント1,000pt付与) |
| 全体公開予定 | 2026年夏ごろ |
前身「my daiz」との違い
2008年の「iコンシェル」から続くドコモのAIアシスタント構想。前身の「my daiz」はシナリオ対話型モデルで「天気や交通情報レベルの簡単な会話には対応できても、自由な相談には答えられなかった」(道上禄可・マーケティングメディア部長)という限界があった。生成AIの登場でその壁を突破し、SyncMeは「幅が全然変わった」再挑戦として位置づけられている。
将来構想
スマホを超えた「生活まるごとAI」
MWCブースには未来のコンセプトモデルも展示された。スマホのロック解除と同時に今やるべき情報がカード形式で優先順位順に並ぶホームAI化、小型携帯デバイスや据え置き型ロボット(ワラピィの立体フィギュア型)への展開も描いている。「読書しようとすると照明を自動でリラックスカラーに変えブラインドを閉める」という先回り動作も構想中だ。Googleカレンダー連携や、企業エージェント・友人エージェントとの連携機能も開発中であることが明かされた。
【続報・2026年5月14日更新】パイロット稼働&「AIの身分証」プロトまで——2か月で見えた次の景色
SyncMeはもう”発表されたAI”ではない。動き始めたAIだ。
① パイロット版、モニター5,000人へ配信開始
3月2日の募集と同時に走り出したパイロット版は、現在モニター向けにアプリ配信中。SNSやnoteには「dアカウント連携の初期セットアップで本当に趣味が当てられた」という体験談も上がり始めている。正式サービスは2026年夏予定で変更なし。
② “AIに身分証を”——5月12日、NTTドコモビジネスが信頼基盤プロトタイプ発表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年5月12日 |
| 主体 | NTTドコモビジネス |
| 内容 | AIエージェント属性情報レジストリ(仮称)のプロトタイプ |
| 仕組み | 検証可能なデジタル証明書(VC)でAIの信頼性を即時確認 |
| SyncMeとの関係 | 将来の”企業エージェント・友人エージェント連携”の土台 |
SyncMeが他社AIや企業AIと”会話”する時代に向けて、「相手のAIは本物か」を瞬時に検証する基盤が並行で動き出した。AIエージェント経済圏が現実に近づく一手だ。
③ MNP・ARPU反転戦略の”主力商品”へ
ケータイWatchの直近レポートでは、SyncMeをMNP(番号ポータビリティ)と通信単価(ARPU)の反転を仕掛ける主力商品として位置付け。”AI時代の新しい価値創造”を旗印に、ドコモ全社が攻勢モードに入った。
④ MWC2026で見えた次のキーワード——「6Gの主役はAIとロボット」
会場ではドコモの新型入力デバイス、KDDIの未来都市デモ、日本発ペット型ロボット、自由視点映像技術が話題に。SyncMeはこの大きな潮流の中で「個人側の窓口」を担うサービスとして位置付けられた。

