
病院で働く人の間で、
「もう辞めたい」
「退職したい」
「このまま続けられない」
という声が目立つようになっています。
では本当に、病院の退職希望は急増しているのでしょうか。
結論から言うと、看護職員の離職率そのものは直近で急増していません。
日本看護協会の「2025年 病院看護実態調査」では、2024年度の正規雇用看護職員の離職率は11.0%。前年度より0.3ポイント低下しています。
ただし、現場の空気は軽くありません。
物価高、人手不足、夜勤負担、メンタル不調、賃金の伸び悩み。
病院の中では、静かに疲れが積もっています。
この記事では、病院で退職希望が増えているように見える理由を、最新データと現場目線でわかりやすく解説します。
結論
病院で退職希望が増えているように見える理由は、主にこの5つです。
- 人手不足で一人あたりの負担が増えている
- 夜勤・残業・急な勤務変更がきつい
- 賃金が他産業ほど上がりにくい
- メンタル不調者が多い
- 病院経営の悪化で職場に余裕がない
つまり、問題は「最近の若者が我慢できない」ではありません。
むしろ、現場の限界が見えやすくなったという話です。
離職率は急増していない
まず、数字を確認します。
日本看護協会の「2025年 病院看護実態調査」によると、2024年度の看護職員の離職率は以下の通りです。
| 区分 | 離職率 |
|---|---|
| 正規雇用看護職員 | 11.0% |
| 新卒採用者 | 8.4% |
| 既卒採用者 | 16.1% |
前年度と比べると、正規雇用看護職員は0.3ポイント減少、新卒採用者は0.4ポイント減少しています。
つまり、データ上は「離職率が急増」とは言えません。
ただし、既卒採用者の離職率は16.1%と高めです。
転職して入った人ほど、職場とのミスマッチが起きやすいことが見えます。
それでも退職希望が目立つ理由
では、なぜ「病院を辞めたい人が増えている」と感じるのでしょうか。
理由は、実際の離職者数だけではなく、退職を考える前段階の人が増えているからです。
たとえば、
- 退職まではしないが転職サイトを見る
- 退職代行を検索する
- 同僚に「辞めたい」と漏らす
- 夜勤明けに限界を感じる
- SNSで愚痴を吐く
- 休職を考える
こうした“退職予備軍”は、離職率の数字にはすぐ出ません。
病院の廊下にある非常灯のように、普段は静か。
でも、いざという時に赤く光る。
今の医療現場は、そのランプがあちこちで点き始めている状態です。
理由1:人手不足
一番大きいのは、人手不足です。
厚生労働省も、看護職員確保対策を進めています。
少子高齢化で医療ニーズは増えていますが、働く人の確保は簡単ではありません。
人が足りない病院では、こうなります。
- 休みが取りにくい
- 夜勤回数が増える
- 急な呼び出しがある
- 新人教育に手が回らない
- できる人に仕事が集中する
この状態が続くと、真面目な人ほど先に疲れます。
病院は、誰かの命を守る場所です。
でも、働く人の生活まで削ってしまえば、現場は長く持ちません。
理由2:夜勤の負担
病院勤務で避けて通れないのが夜勤です。
日本看護協会の調査では、看護職員確保のために病院が導入している働き方として、
「日勤のみ」54.7%、
「夜勤回数や夜勤時間、曜日が選択できる」44.1%
が挙げられています。
これは裏を返せば、夜勤が人材確保の大きな壁になっているということです。
夜勤は、体力だけの問題ではありません。
- 睡眠リズムが崩れる
- 家族との時間が合わない
- ミスへの緊張感が強い
- 夜間の急変対応が精神的に重い
- 明けの日も疲れが抜けない
若い頃は勢いで越えられても、30代、40代、50代になると体に響きます。
ここで退職や転職を考える人は少なくありません。
理由3:給料が上がりにくい
病院職員の退職希望を語るうえで、賃金の問題は避けられません。
日本病院会など6団体の緊急要望では、病院経営について、
医業利益で約7割、経常利益で約6割の病院が赤字
とされています。
さらに、物価や賃金が上がる一方で、病院は診療報酬という公定価格に縛られています。
一般企業のように、コスト増をすぐ価格転嫁できません。
結果として、
- 物価は上がる
- 責任は重い
- 業務量は増える
- でも給料は思ったほど上がらない
このズレが、退職希望につながります。
「命を預かる仕事なのに、なぜ報われないのか」
そう感じる人が出るのは自然です。
理由4:メンタル不調
病院の仕事は、心にも負担がかかります。
日本看護協会の2025年調査では、正規雇用看護職員のうち、病気で1か月以上の連続休暇を取得した者がいる病院の中で、**メンタルヘルス不調者がいた病院は79.5%**とされています。
これはかなり重い数字です。
医療現場では、
- 患者対応
- 家族対応
- 急変対応
- クレーム
- 多職種連携
- 医療事故への不安
- 人間関係
これらが毎日重なります。
白衣の中に、疲れた心を隠している人は多い。
笑顔でナースコールに向かいながら、心の中では限界を迎えている人もいます。
理由5:人間関係
病院退職の理由として、昔から根強いのが人間関係です。
医療現場はチームで動きます。
医師、看護師、薬剤師、検査技師、リハビリ職、事務職、委託業者。
全員がかみ合わないと、仕事は回りません。
しかし、忙しすぎる職場では言葉が荒くなります。
- 教え方がきつい
- 質問しにくい
- ミスを責める空気がある
- 派閥がある
- 上司に相談しにくい
こうした環境では、新人も中堅も疲れます。
退職の直接理由は「家庭の事情」でも、本音は人間関係。
これは珍しくありません。
病院側も苦しい
ここで大事なのは、病院側だけを責めても解決しないことです。
病院経営は、かなり厳しくなっています。
日本病院会などの資料では、物価高騰、人件費上昇、医療の高度化により、病院の経費が急増しているとされています。
しかし、診療報酬は公定価格のため、一般企業のように自由に値上げできません。
つまり、現場職員は苦しい。
病院経営も苦しい。
この板挟みが、退職希望を生む土壌になっています。
地方病院ではさらに深刻
地方病院では、退職希望の影響がより大きくなります。
都市部なら転職先も人材も比較的あります。
しかし地方では、1人辞めるだけでシフトが崩れることがあります。
特に北海道のように地域が広い場所では、
- 通勤距離が長い
- 冬道の移動が大変
- 代替人員が少ない
- 診療科の維持が難しい
- 出張医や応援人材に頼る場面がある
こうした地域事情もあります。
病院の退職問題は、単なる職場の話ではありません。
地域医療そのものに関わる話です。
退職前に考えたいこと
もし今、病院を辞めたいと感じているなら、いきなり退職届を出す前に、次のことを整理した方がいいです。
- 辞めたい理由は人間関係か
- 夜勤が原因か
- 給料が原因か
- 体調やメンタルが限界か
- 部署異動で解決するか
- 休職や勤務形態変更で改善するか
- 別の病院なら続けられるか
- 医療職自体を離れたいのか
「病院を辞めたい」と「医療職を辞めたい」は別です。
ここを混ぜると、転職しても同じ悩みを繰り返します。
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病院勤務で疲れが抜けない人は、まず睡眠とメンタルケアを整えるのが先です。
夜勤明けの睡眠環境は、想像以上に大事です。
体が壊れる前に、休める環境を作ることも仕事の一部です。
FAQ
病院で退職希望が増えているのは本当ですか?
看護職員の離職率そのものは直近で急増していません。日本看護協会の2025年調査では、2024年度の正規雇用看護職員の離職率は11.0%で、前年度より微減しています。ただし、退職を考える人や相談する人が増えている可能性はあります。
病院を辞めたい理由で多いものは何ですか?
主な理由は、人手不足、夜勤負担、賃金への不満、人間関係、メンタル不調、家庭との両立です。特に夜勤と人間関係は退職希望につながりやすい要因です。
看護師の離職率は高いですか?
日本看護協会の2025年調査では、2024年度の正規雇用看護職員の離職率は11.0%です。新卒採用者は8.4%、既卒採用者は16.1%で、既卒採用者の離職率が高めです。
病院の人手不足はなぜ起きるのですか?
少子高齢化による医療需要の増加、夜勤負担、賃金の伸びにくさ、地方の人材不足、医療の高度化による業務増加などが重なっているためです。
退職する前に何を確認すべきですか?
退職理由を整理することが大切です。人間関係、夜勤、給料、部署、体調、家庭事情のどれが一番の原因かを確認しましょう。部署異動や勤務形態変更で改善する場合もあります。
まとめ
病院で退職希望が増えているように見える背景には、現場の限界があります。
ポイントは以下です。
- 看護職の離職率自体は直近で急増していない
- ただし退職を考える人は増えて見える
- 人手不足と夜勤負担が大きい
- 病院経営の悪化で賃上げが難しい
- メンタル不調や人間関係も深刻
- 地方病院では1人の退職が地域医療に響く
病院は、人を治す場所です。
でも、働く人がすり減ってしまえば、その灯りは長く持ちません。
退職希望の増加は、個人のわがままではなく、医療現場からの警告です。
その声をどう受け止めるか。
ここから先の地域医療を左右する話です。
参考情報
- 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」
https://www.nurse.or.jp/home/assets/20260331_nl01.pdf - 厚生労働省「看護職員確保対策」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000095525.html - 厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/dl/gaikyou.pdf - 日本病院会ほか「緊急要望」
https://www.hospital.or.jp/site/news/file/1758178883.pdf

