2026年10月24日更新 | 経営・中小企業・自営業 | 執筆:かめきち
「倒産が増えている」——もう実感のレベルを越えて、統計がはっきり示しています。2025年の企業倒産は1万300件で、2013年以来12年ぶりの高水準。2026年に入っても上半期で5,335件と4年連続の増加が続く。この記事では、帝国データバンク・東京商工リサーチの統計から業種別の件数・割合・倒産しやすさを整理し、同じ自営業として取るべき自衛策まで書き切ります。

件数も発生率も、統計上は「増える時代」に突入している
直近データ 倒産件数の推移(2024→2026)
まず全体像から。負債1,000万円以上の「企業倒産」(東京商工リサーチ集計)は、ここ3年でこう動いています。
| 年 | 倒産件数 | 前年比 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 2024年 | 10,006件 | +15.1% | 3年連続で1万件超え |
| 2025年 | 10,300件 | +2.9% | 12年ぶりの高水準・人手不足倒産が過去最多 |
| 2026年上半期(1-6月) | 5,335件 | +6.6% | 上半期として4年連続増 |
出典は東京商工リサーチの全国企業倒産集計と帝国データバンク倒産集計。月単位でも、2026年7月は1,028件(+6.9%)、8月830件(+3.1%)、9月831件(-4.8%)と、高水準でのもみ合いが続いています。
さらに見逃せないのが「倒産しなくても消える」層だ。中小企業白書によれば、休廃業・解散は2024年に約7万件。倒産の7倍が、実は「静かにやめる」ことで起きているのです。
業種別 倒産件数と割合ランキング
2025年(暦年)の業種別内訳を、両調査機関のデータで見ます。
| 業種 | 件数(2025年) | 特徴 |
|---|---|---|
| サービス業ほか | 3,478件(構成比約34%) | 最多。飲食店・小売・サービス業が含まれ、人件費・水光道費の上昇が直撃 |
| 建設業 | 2,021件(約20%) | 2000年以降で初の4年連続増・過去10年最多。人手不足が主因 |
| 卸売業・製造業など | 残り約47% | 10産業のうち7産業で前年を上回る増加幅 |
帝国データバンクの2026年上半期集計でも、「サービス業」が1,418件(前年比6.7%増)と2000年以降で最多を更新。主要7業種中6業種で前年を上回りました。つまり「どこかの業種だけが苦しい」のではなく、ほぼ全業種が同時に増加している——これが今の景気の異常さです。
倒産発生率 「業種の危険度」で見る
件数は「その業種の企業数が多いほど増える」ので、危険度の指標としては不十分です。そこで見るべきが倒産発生率(その業種にいる企業が1年間に倒産する確率)。東京商工リサーチの2025年度データは以下の通りです。
| 業種 | 倒産発生率 | 読み方 |
|---|---|---|
| 建設業 | 0.347% | 全業種平均の約1.2倍。約288社に1社が年間で倒産する計算 |
| 小売業 | 0.318% | 飲食店を含む。物価高と人件費のダブルパンチが直撃 |
| 全産業平均 | 0.284% | 10年間で最悪の水準を更新 |
一見「0.3%なら大したことない」と思うかもしれないが、これは1年間の数字だ。10年間の複利で見ると、建設業なら約3.4%——100社のうち3〜4社が10年内に倒産する世界です。しかもここに「休廃業・解散」の7万件は含まれない。事業を続けるリスクの実感値としては、もう十分に高い。なお10年後の事業存続率の実態は、別記事で詳しく検証しています。
なぜ増えているのか 3つの理由
① 人手不足倒産が過去最多
2025年の人手不足倒産は統計開始以来最多を更新。2026年度上半期でも、建設業70社(前年同期比+17社)が最多で、サービス業63社、製造業25社と続きます。求人しても人来ない・賃上げできない・仕事を断る——この三重苦が倒産に直結する構図です。
② 物価高倒産が集計開始以来最多
帝国データバンクによると、2026年上半期の「物価高倒産」は556件(前年同期比23.8%増)。原材料・エネルギー・人件費の上昇を販売価格に転嫁しきれない事業主が、時間の問題として倒れる。円安と輸入物価の影響は、中小事業主ほど受けやすい構造です。
③ 経営者の高齢化・後継者難
2026年上半期は「経営者の病気・死亡による倒産」の急増も指摘されています。事業は続けたい健康も体力も続かない、後継者もいない——この層の倒産がここ数年で一気に増えています。
倒産は「経営が下手な人の出来事」ではなく、構造(人手不足・物価高・後継者難)に合致した業種が、環境として増える時代になった。危険度は「業種×経営体力」で決まる。
自営業が今やるべき自衛策
私自身も電気工事の個人事業主です。統計を眺めて一喜一憂するだけでは意味がないので、実務レベルの自衛策を3つに絞って書きます。
① 売掛金の回収スピードを上げる
物価高倒産の実態は「利益は出ているのに、現金が回らなくて倒れる」ケースが大半です。請求書の発行日・回収サイトを見直すだけで、資金繰りの余裕は変わります。取引先の「急な支払サイト変更」は倒産の先行指標としても有名です。
② 公的セーフティネットを知っておく
経営悪化前の「正常時」に知っておくべきは、中小企業経営強化支援資金(セーフティネット)、労働局の人手不足対応助成金、納税の猶予制度など。いざという時に申請できるかどうかは、日頃の書類整理で決まります。経費の付け方を含めた帳簿の整備は、個人事業の必要経費の考え方で整理しています。
③ 「やめ方」も経営計画に入れる
倒産と廃業は違います。計画的な廃業・休業なら、債務整理の必要も回避できるケースが多い。個人事業の廃業・休業手続きの全工程を一度読み込んでおくと、「倒産する前に自力で降りる」選択肢が現実味を帯びます。後継者難が最多級の要因である以上、自分の事業の「出口」を先に設計しておくのが、この時代の経営計画だと思います。
「借りる・もらう」の選択肢 融資・ファクタリング・補助金・助成金
自衛策の実務編として、「外部資金」の全体像を整理します。混乱しやすいのが融資・ファクタリング・補助金・助成金の違い。まず用語から押さえます。
| 種類 | 正体 | 返済 | スピード |
|---|---|---|---|
| 融資(公庫・銀行) | 借りたお金。返済が必要 | 要 | 1〜2週間〜 |
| ファクタリング | 売掛金を早期に現金化(譲渡) | 不要(手数料差引) | 最短即日〜数日 |
| 補助金 | 受給のため申請・審査が必要 | 不要 | 公募期間あり・採択まで時間がかかる |
| 助成金 | 要件を満たせば受給(支給要件が明確) | 不要 | 事後請求型が多い |
① 公的融資(最初に当たるべき窓口)
資金繰りが厳しくなったら、まずセーフティネット系の公的融資を確認します。日本政策金融公庫の「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)」は、社会的・経済的環境の変化で一時的に業況が悪化している事業者向け。2026年度は物価高騰や海外情勢への対応として対象要件が拡大されており、地方自治体の制度融資(経営安定サポート資金など)も拡充が続いています。
信用保証協会の「セーフティネット保証(4号・5号)」は、一般保証とは別枠での保証を受けられる制度。取引先倒産や業況悪化で資金繰りが厳しい場合、市区町村の認定を受けて申し込みます。銀行借入と違い、公的融資は金利も低く、借入の履歴を気にされる相談先(公庫の相談窓口・ 信用保証協会)は無料なので、早い段階での相談が原則です。
② ファクタリング(便利だが、手数料に注意)
売掛金の入金を待たずに現金化できるのがファクタリング。審査が速く、最短即日もあり、個人事業主でも利用できます。ただし手数料は2者間で8〜18%程度、3者間で2〜9%程度(freee・金融庁の解説より)と、銀行融資より割高です。
金融庁が注意喚起を出している資金調達方法でもあります。「高額な手数料のファクタリングに要注意。かえって資金繰りが悪化する」というのが公的見解です(金融庁|ファクタリングの利用に関する注意喚起)。使いどころは「入金日までの数日〜数週間を繋ぐ」こと。経常的な資金繰り手段にするのは逆効果です。
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③ 補助金(申請が面倒だが、返済不要)
個人事業主・小規模事業者が受けられる代表的な補助金はこの3つです。
| 制度 | 補助上限(目安) | ポイント |
|---|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金 | 一般型50万円(+インボイス特例等で上乗せ) | 個人事業主が申請しやすい。商工会・商工会議所の支援が必要。第20回は2026年11月5日〜12月15日に受付予定 |
| デジタル化・AI導入補助金2026 | ITツール導入費の一部 | 2026年度は中小機構がAI導入支援も統合。デジタル投資の入口に |
| ものづくり・サービス生産性向上補助金 | 数百万〜最大1,000万円超 | 設備投資型。採択率は低いが補助額は大きい |
補助金は「申請から採択まで期間がある」「採択されなければ1円も出ない」点に注意。ですが返済不要なので、設備投資や販路開拓の計画があるなら、毎年の公募スケジュールをチェックしておく価値は十分にあります。
④ 助成金(雇用・人手不足対策で使える)
従業員を雇う・賃上げする・働き方を変える——なら助成金が使えます。代表的なのは:
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 雇用調整助成金 | 景気変動等で事業活動が減少(前年同期比10%減など)した際の休業手当等を助成。2026年8月から上限が1人1日9,110円に引上げ |
| 業務改善助成金 | 事業場内最低賃金を引き上げた場合の設備投資等を助成(上限400万円・助成率最大4/5) |
| 人材確保等支援助成金 | 雇用管理制度改善・若年者人材確保など。人手不足倒産対策の本命 |
| 中小企業省力化投資補助金 | 2026年度新設。人手不足を補う省力化投資を支援し、賃上げを後押し |
助成金は受給要件・申請書類が細かい反面、要件を満たせば確実にもらえるのが特徴です。社労士や商工会の無料相談を活用すれば、自力で調べるより早く「受けられる制度」が洗い出せます。
資金調達の選び方(結論)
急ぎの繋ぎ=公的融資のセーフティネット(低利で長期)。売掛金が溜まっているだけ=ファクタリング(手数料に注意・繰り返さない)。設備投資・販路開拓=補助金(公募期日に間に合わせる)。雇用・賃上げ=助成金(要件を満たす運用を)。この優先順位で考えると、やみくもに高い資金を借りずに済みます。
よくある質問
| Q | 2025年の倒産件数はいくつ? |
|---|---|
| A | 東京商工リサーチ集計で1万300件(前年比2.93%増)。2013年以来12年ぶりの高水準でした。 |
| Q | 倒産が最も多い業種は? |
| A | 件数ではサービス業(3,478件)。発生率では建設業0.347%が最も高く、次いで小売業0.318%です。 |
| Q | 倒産発生率0.284%って高いの? |
| A | 10年間で最悪の水準です。建設業なら約288社に1社が年間で倒産する計算になり、10年スパンでは数十社に1社規模のリスクになります。 |
| Q | ファクタリングは倒産回避に使える? |
| A | 短期的な繋ぎとしては有効ですが、手数料が2者間で8〜18%と割高です。金融庁も「かえって資金繰りが悪化する」と注意喚起しています。恒常的な利用は避け、まず公的融資の相談を。 |
| Q | 個人事業主でも補助金はもらえる? |
| A | もらえます。小規模事業者持続化補助金は個人事業主の申請が多く、一般型50万円(+特例で上乗せ)。デジタル化・AI導入補助金2026も小規模事業者が対象です。公募期間の確認が必須です。 |
| Q | 個人事業主でも「倒産」する? |
| A | 「倒産」というより自己破産・任意整理の形になりますが、実態は同じで債務超過からの脱出が難しくなる状態です。統計上は法人ほど数えられませんが、廃業約7万件の中に個人事業の苦境が含まれます。 |
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まとめ 統計は「他人事」で読むものではない
1万件超が2年続いた日本の倒産統計。構成比で見ればサービス業と建設業が過半を占め、発生率なら建設・小売が突出しています。そして件数以上に重要なのが「休廃業・解散 約7万件」という暗数です。
同じ自営業として一番言いたいのは、この統計は他人事ではないということ。人手不足・物価高・後継者難は、今日も誰かの商圏で進行しています。回収サイトの見直し、セーフティネットの把握、出口の設計——順番はどこでもいいので、今月ひとつ、手をつけてください。統計の次の「1件」を、自分の番にしないために。
参考・出典
- 東京商工リサーチ|全国企業倒産状況(月次・年次集計)
- 帝国データバンク|倒産集計 2026年上半期報(5,335件・4年連続増)
- 帝国データバンク|「物価高倒産」の動向 2026年上半期(556件・最多更新)
- ロイター|25年の企業倒産件数、12年ぶり高水準 物価高など響く
- 中小企業白書2025年版 第8節 開業、倒産・休廃業(休廃業約7万件)
- 帝国データバンク|倒産集計 2025年報(建設業2,021件・4年連続増)
本記事は2026年10月24日時点で公表された統計(帝国データバンク・東京商工リサーチ・中小企業庁)に基づいて作成しています。倒産集計の調査対象は負債1,000万円以上の法人・個人事業主で、月次データは後日修正される場合があります。記事内のリンクにはアフィリエイト(PR)を含みます。

